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「さっくん………？」
「あ、ごめんごめん起きちゃった？」
「…………っ、」
「わ、…っと、どした？.......怖かったよな、ごめんな」
Aが俺にぎゅっと抱きついてくる。
そりゃあそうだ、誘拐されて目の前であんな現場を見て、事情聴取までされて。
だけど、Aが次に発したのは全然違うことだった。
「心配、した」
「…………え」
「さっくんが、私のせいで死んじゃったら、どうしようって」
「………A、」
「いなくならないで」
Aが顔を上げて目が合う。泣きそうなその目を見て、
「ごめん。ごめんな、A。俺、大丈夫だから。ここにいるよ」
「……そうじゃなくて」
「私、さっくんの傍にいたい。ずっと」
そこまで言われてやっと、Aが何を言おうとしてるのかを理解する。
Aのことはずっと、妹みたいだと思ってた。
けど、Aが高校生になって毎日顔を合わせるようになって、先輩の話なんかも聞いて、
そうするうちにそんな意識は気づけば無くなっていた。
取られたくない。
俺が守ってやりたい。
まだ小学生だったAを突っぱねて、事故にまで遭わせて、俺はたくさんAのことを傷つけたと思う。
でも今ここで、「俺は大人でAは高校生。Aはこの先もっといい人に出会える時がくるよ」
なんて言ったら、また傷つけてしまうかもしれない。
だけど、この線は傷つけたくないからこそ越えちゃいけないものでもある。
だったら、今の俺がすべきことは。
「A、よく聞いてほしい。
俺は大人で、Aは高校生。世間一般じゃ付き合っちゃいけない年齢じゃんか」
「......うん」
「でも、俺はAのことを手放す気はもうないよ。
それに、俺はAのことをちゃんと大事にしたい」
「......！」
今の真剣な想いを伝えると、顔を赤くする。あー、かわいい。
「それと、A」
「ん？」
「好きだよ」
「......！」
俯いてしまったAをまた抱きしめて撫でながら、この大切な存在を、俺の全てを賭けてでも守り抜こうと強く思った。
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作者名：灯莉 | 作成日時：2023年7月22日 2時
