桜色デイズ【桃】 (ページ43)

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「あー空いた空いた、座ろうぜ」

俺は空いたテーブルの上にリュックを放り投げてどかりと座った。

後ろで口笛を吹いていたやつらも次々と俺の隣に勢いをつけて座り込んでくる。

「うぇーい、…いや痛ってぇよ馬鹿野郎」

小突き返したら反動でまたぶつかってきて、いちゃつくなよーと飛んできた声にうるせぇ！と笑いながら返す。

いつものように、だらだらした時間が流れはじめたその時。

「Aちゃん！！！！」

甲高い声が聞こえて、思わず声の方をチラリと見ると、走ってるAがそのまま横断歩道に飛び出していくところだった。

大きなトラックが、すぐ真横に迫っていた。

そこからは、全部がスローモーションみたいに見えた。

友達の声に反応してAが道路の真ん中で立ち止まった瞬間、その体が荷物ごと吹っ飛ばされて道路に打ち付けられる。

じわじわと赤い何かが広がって、背中のリュックサックから飛び出たシルバニアファミリーの人形がそれに侵食されていった。

「うわ、やば…おい、佐久間」

「A！！！」

横から関わるなと言いたげに腕を引っ張られたけれど、俺の足はもう動き出していた。

「A、A……！」

近寄って状態を確認しようとした時、Aの友達も近付いてきた。

泣きそうなその表情を見て、できるだけ優しく声をかける。

「大丈夫だからね、俺が今」

「あっちいって」

「…………え？」

「さっき、じゃまって言った」

愕然とした。

俺がAに「邪魔」なんて言わなかったら、Aは今ごろあのテーブルで人形遊びをしていたはずなんだ。

　

それから俺はつるんでいたグループを抜けて、あの公園での出来事を経験するまでささくれ立った日々を送ることになった。