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帰り道、私はの体調を気遣って送ろうか?と言ってくれる目黒先輩を丁寧にお断りして、ひとりで帰っていた。さすがに部活はお休み。
向井先輩も「大丈夫?俺ついてこうか?」と心配してくれて、目黒先輩と同じこと言ってます、と思わず笑ってしまった。
夕焼けに照らされて伸びる影を見つめながら、今日保健室で見た夢を思い出す。
(............さっくん、)
小学生のとき、好きな人だあれ?と聞かれたら絶対に誰にも言わなかった。
でも心の中ではいつもさっくんのことを考えていた。
だってさっくんはかっこいいし、優しいし、一緒に遊んでくれるしたくさん話してくれる。
走るのもサッカーもちょっと苦手だけど、すっごく高くジャンプできる。ダンスだって上手。
クラスの男の子なんかより、さっくんの方がよっぽど魅力的だったのだ、当時のわたしにとっては。
でもそれは、所詮何も知らない小学生の憧れにも近しい気持ち。
雪が丘までの通学路にある交番に勤務すると知ったときは嬉しかったけど、また前みたいに楽しくお話しできたらいいな。
それくらいのはずだったのに。
『桜菜ー、おはよ!』
『行ってらっしゃ〜い』
『俺しか見てないから。』
『大丈夫、大丈夫だから』
あの時、抱きしめられたぬくもりが忘れられない。
(......違う、ってば。目黒先輩が、)
目黒先輩が?
そこでふと立ち止まる。
だって、先輩には好きな人がいる。わたしの目から見てもお似合いだと思った。
わたし、本当に先輩のことが好きなのかな。
微かに燻り始めた胸の想いに気づきかけた時だった。
「おい、大人しくしろよ」
「っ?!ゃ、...っ、やだ、離し.......っ」
背後から誰かの腕に首を絞められて、何かを嗅がされたと分かった瞬間意識が遠退いていった。
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作者名:灯莉 | 作成日時:2023年7月22日 2時