桜色デイズ【桃】 (ページ35)

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いつからだっただろうか。

Aのことが「守るべき存在」から「守りたい存在」に変わっていったのは。

高校生のときの俺は、将来何をしたいのかもどうなりたいのかも分からず、ただむしゃくしゃした気持ちを持て余すガキだった。

親父と喧嘩した回数は数えきれないし、担任に盾突いたこともたくさんあった。

あの頃はまだ小学生だったAと関わることは正直、負担になっていた。高校生にもなって小さい女の子と遊んでるなんて、だっせーとさえ思っていた。

.......だから、まだ小さかったAにそんな感情をぶつけることを止めるべきだということさえ考えられなかったんだ、当時の俺は。

高2の春。

俺が世間で言うところの「不良」のような枠組みに入るであろう人間になりつつあった頃。

似たような想いをくすぶらせていた仲間たちと毎日のように遊び歩いていて。

「ほら佐久間もやればいいじゃんか、絶対似合うってお前！」

「いや俺はいいよ、親父に怒られるし」

「そんなん怒られてなんぼだろ！やっちまえよー」

いつメンのうち一人の知り合いが経営しているという美容院に来ていて、髪をみんなで染めようぜとかいうくだらない計画だった。

うちの高校はもちろん校則で髪を染めるのは禁止。ただ別に荒れている高校ではなかったから、俺ら以外にそんな反抗心の強い奴はいなくて、ブリーチなんてしてる生徒は校内にはひとりもいなかった。

ただ俺は大人に反抗したいという気持ちよりかは、先の見えない人生と価値を見いだせない自分に嫌気がさしていただけで、そこまでしなくても...という気持ちは内心あった。

「いや俺はいいって！何回言わせんだよ笑」

ほらお前らこそ早くやれよ、と茶化し気味に返したとき。

「いっそのことピンクにでもしてみれば？ほら、最近言ってる近所のガキも寄り付かなくなるんじゃね？」

「いいじゃん、佐久間ずっと迷惑がってたしやれば？いい機会だよ」

.......Aのことは、「ちょっともう相手をするのは面倒な小学生」とよく愚痴っていた。

言い訳がましいし最低な話だから誰にも言ってないけど、今考えれば別にAが嫌いだったわけじゃちっともなかった。

思春期によくあるあのどうしようもない苛立ちに任せて、ストレスのはけ口を探していた。それだけだった。