桜色デイズ【桃】 (ページ34)

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さっくんが急に立ち上がって私のおでこに手を当てた。

急に触れられたことに驚いて、思わず背筋がびくりと震える。

「あははっ、なにどうしたのー？びっくりしちゃったか」

「て、手が冷たかったから...！」

「まじ？あちゃー、それはごめん。でもまあ、俺もいつまでもここにいるわけにいかないしな。

先生に声かけてくるから、目黒くんそれまではここにいてもらえる？」

「はい、大丈夫です」

「いやいやいや、先輩だって授業が」

「さんきゅ！それじゃ俺はこのまま交番に戻るから、バイバイ」

私の抵抗もむなしくさっくんは保健室を出て行ってしまった。私の方を見向きもせずに。

(.......さっくん、帰っちゃった)

なぜだか、気になるのは先輩じゃなくて...

って、違うから！

小さいときは私が熱を出したり風邪を引いたりしたら、仕事でいない両親の代わりによく隣にいてくれていた。

さっきおでこを触ってきたのはきっとその時の名残というか、癖みたいなもので...。

「...佐久間さんのこと、気になる？」

「？！.......ぁ、いや」

慌てて否定しようとしたら喉からは掠れた声が出てきただけだった。

「あはは。うまくいくといいね、俺は歳の差とか気にしない派だから」

「............え」

その話しぶりに、私がさっくんのことを好きだと勘違いしているらしいと気づく。

「...さっくんとどんな話したんですか」

「秘密」

下手に訂正すると余計に本当みたいに聞こえてしまうだろう。

ただここで想いを伝えるわけにもいかないし、何を話したのかいくら尋ねても先輩は教えてくれそうになかった。