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「8歳年上の幼馴染のお兄ちゃんがいて。...佐久間大介、って名前だからさっくんって呼んでるんです」
「さっくん？」
「はい」
「可愛いあだ名だね」
「小さいときは『だいすけ』が言えなくて。さっくん、て」
「8歳年上で幼馴染って、近くに住んでたとかってこと？」
「生まれてからすぐ引っ越しした家がお隣さんだったです。それから、もう一緒に遊んだり走ったり絵描いたりして」
「うわ、めっちゃ優しい」
「そうなんですよ！……昔いろいろあって、今は一線引かれちゃってるんですけど」
「……そうなの？」
「……さっくん、昔ちょっと荒れてて。その時に人生で初めてさっくんにすごい怖い顔で怒られたんです」
「トラウマになるやつだ、それ」
「……それから一時期さっくんとお話するのが怖くなっちゃって、春になるといつもそれを、思い出します」
「その人とはどうなったの？それ以来関係切れたまんま？」
「いや、少し後にきっかけがあって、今はもう普通にチャットもするし、毎朝顔を合わせるようになりました」
「まだお隣さんのまんまなの？」
「家自体は隣なんですよ！けどあの……そこの、交番で働いてて」
「えすげえ！警察官てことか」
「いろいろあったけど、自慢のお兄ちゃんというか…すごく大好きで大切な人です。ずっと一緒にいたいなあって」
「俺はまだ高校生なんで、大人にならないと分からないこととか、たくさんあるとは思うんですけど。
.......でも、Aさんは俺じゃなくて、佐久間さんのことが」
「ダメだよ」
思わず目黒くんの言葉を遮っていた。
「それ以上はダメ。そもそも、それが本当だったとしても俺にはそんな資格はないから。だって...」
俺はさっきから何を焦っているんだ？
こんなふうに高校生に煽られて、「あの時」の記憶を掘り起こしてましてやそれを話そうとしている。
「...いや、なんでもないや。ごめん」
その時、一瞬沈黙が下りた保健室に小さな呻き声が響いた。
「ん..........」
布団がもぞもぞと動く。Aが意識を取り戻したようだった。
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作者名：灯莉 | 作成日時：2023年7月22日 2時
