桜色デイズ【桃】 (ページ31)

今日:99 hit、昨日:48 hit、合計:8,122 hit

31 ページ31

と言いながら、この前衝動的にAを抱きしめたことを思い出す。

小さい頃から一緒だったから、ハグくらいなんでもないと思ってた。それ以上のこともたくさんしてたし。

けど、あの時のAは俺の想像していたAよりはるかに小さくて、柔らかくて、愛おしかった。

俺だったら絶対、こんなに泣かせてつらい思いをさせたりしないと思った。

けど俺にはそんなこと言う資格はない。だって、

「それって、」

突き放すようにきつい口調で諭しても、目黒くんは俺を見つめ返してくる。

「それって、ただの建前じゃないんですか。……Aさんの気持ち、ちゃんと考えたことあるんですか」

「は、」

「Aさん、俺に毎日佐久間さんの話するんですよ」

それは俺も同じだよ。そう言おうとしたけれど、言えなかった。

目黒先輩目黒先輩って言ってるAが、その先輩の前じゃ俺の話ばっかりなんて、初めて知ったから。

……嬉しいと、思ってしまった自分がいた。

「佐久間さんのこと話してるAさん、めちゃくちゃ楽しそうで。もう俺が佐久間さんの説明できるくらい笑」

「...そんなに？」

「そんなです。大好きな人だから、ずっと一緒にいたいって、入学式の日にですよ？」

「…………え」

「名前も知らない俺に、ずーっと。めっちゃ面白いですよね」

目黒くんがベッドで眠るAに優しい眼差しを向けて、

「まだ出会ってからちょっとしか経ってないですけど、自慢の後輩、って感じします」

と呟いた。