桜色デイズ【桃】 (ページ27)

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もやもやした気持ちを抱えたまま土日、振替休日を過ごして火曜日。

いつものように並木道を歩いていた。

「えーマジでー？！めちゃくちゃ面白いんだけどそれ！」

背後からきゃはは、と甲高い笑い声が聞こえて、後ろに何人か女の子が歩いているんだと知る。

特に知っている人ではないし、挨拶をすることもなくしばらく歩いていた。

立ち並ぶ木々が途切れ交番が見えた、と思ったその時だった。

「いやーほんと面白いねあんた......あ、待って」

途端に後ろの声が小さくなり、そこまで耳に流れてきていた会話の続きが気になって思わずそっちに意識を向ける。

「前歩いてるのさ、この前交番のお兄さんといちゃついてた子だ」

一瞬、息が止まった。

後ろにいるのはここまでの会話からして、同じ学年の人ではないのは明らかだったけれど、それでも同じ学校に通う人にあの日の出来事を見られていただなんて、思ってもいなかった。

いつ？どこのタイミングで？

.......まさか。

濡れそぼっていた私に構わずぬくもりをくれたさっくんの、不意に触れた腕の感触を思い出す。

先輩に好きな人がいたことがショックだったはずなのに、さっくんに抱きしめられた瞬間、なぜだかすごくドキドキが止まらなくて。

小さいときは抱きしめられる以上のことも当たり前だったはずなのに、時間が経ってそれすらもできなくなってしまっていたのかと思った。

けれど、ドキドキしたのはそれだけじゃないと思う私も確かにいて。

どうしたらいいか分からないまま、この苦しい気持ちにただ泣いていた。

でもそれを人に見られていたのは想定外だった。

予想外の展開に頭が真っ白になって、おまけに気づいたら交番はとっくに通りすぎていて不安と焦りで心臓がバクバクと音を立てはじめる。

そのまま、視界がぶつりと真っ暗になった。