桜色デイズ【桃】 (ページ26)

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「...けどさ、誰かが助けたのか、もういなかったんだよね」

その時強く思った。

助けなくちゃいけない人に、迷いなく手を差しのべられる人間になりたいと。

何もしたくなくて、大人になりたくなくて、毎日を惰性で過ごして底でもがいてた俺に、やるべきこと、やりたいことが見つかった瞬間だった。

「でも俺さあ、カウンセラーとかそういうのあんま向きじゃないから。

いま思えば軽い決定打だったかもしんないけど、とりあえず俺でも頑張れそうなやつー、って選んだのが警察官だった」

「それで、さっくんは警察官になったんだ」

「まあ今でも思い出してあの時助けられてたわけじゃなかったとしたら、って思うことあったからさ、なんか...

こんな偶然だったけど、会えてよかったって言うか。話したわけでもないけど間違いないな、めっちゃ記憶に残ってるし。

まさかこんな近いとこにいるなんて思わなかったけどさー！」

すげえ偶然だな、と笑うさっくんに合わせて無理矢理笑顔を作る。

平河先生は、さっくんの人生を変えた人なんだ。

そう思ってなぜだか、心の奥がちくりと痛んだ気がした。

(好きな相手の、好きな人.......)