桜色デイズ【桃】 (ページ25)

今日:95 hit、昨日:48 hit、合計:8,118 hit

25 ページ25

涙も止まって、外も晴れて夕焼けが見えはじめた。

ママ心配しちゃうから帰ろ、とさっくんに言われて外に出ると、さっくんの目線が何かを捉えたようだった。

「.......あれ、」

「どうしたの？」

その目線を追えば、暗くなってきた道を歩く深澤先生...と平河先生がいた。

平河先生は確か目黒先輩のクラス担任だったはず。

「あの人.......」

「さっくん、知り合いなの？」

「いや、知り合いっていうか...」

高校生の、俺が人生に迷いまくっていた時のこと。

親父と物凄い勢いで喧嘩をして、とりあえず顔を合わせたくなくて夜遅かったけど外に出た。

その日はめちゃくちゃ雨が降ってて、けど濡れてやるのも癪で傘はさしていた。

投げ捨てたくなる気持ちに何度も襲われたけど、物に当たるのはだめだという理性はあった。

そうやってむしゃくしゃしながら歩いて、公園の横を通り過ぎようとしたとき。

ベンチで髪の長い女の子が横たわるように座っている...というか、意識を失っているように見えて。

助けなきゃ。いや今はいいや、俺、イライラしてるし。

そんな思いを抱きながら、でも立ち止まれずに俺の足は公園をすぐ通りすぎていって。

けど次の信号で止まった瞬間、来た道を振り返って走り出した。

俺がイラついてるのと、あの人が今深刻な状況になっているのは関係ない。助けなくちゃいけないことに変わりは無いんだから。