桜色デイズ【桃】 (ページ23)

今日:14 hit、昨日:48 hit、合計:8,037 hit

23 ページ23

せっかくの体育祭だったのに、それからは目黒先輩が選抜リレーで走っている動画を向井先輩から貰っただけ。

一緒に帰らへん？と誘われたもののとても誰かと話せる気力もなくて、ごめんなさいちょっと用事があって、と心にもない嘘をついて一人で帰ることにした。

そして今日はもうそういう日なんだろうか、突然の大雨に見舞われている。

(.......ほんとツイてないなぁ、今日)

このまま泣きながら帰ったって、大雨で誰にもバレやしないだろう。

そう思ったとき、見慣れた人の姿が視界に入った。

「およ？降ってきちゃったかー...」

さっきまで明るかったと思った空がみるみるうちに暗くなって、雨粒が落ちて来る。Aは確か体育祭だったはずだけど、この時間はもう終わっているかな.......？

開けていた窓を閉めて外の自転車にカバーをかけていると、どしゃ降りの雨の中、見慣れたピンク色のリュックが見えた。

心の片隅ではもしかしたら目黒くんと、なんて思っていたからちょっとだけ嬉しかった俺の気持ちはAの姿を見て一旦奥深くにしまっておくことにする。

「お、お帰り～」

「…お帰り、って。ふふ」

「つい言っちゃうんだよな、何か。体育祭は？どうだったのよ。てかめっちゃ濡れてるしとりあえず拭きなこれ！あ、傘は？！」

「降ると思ってなくて。あははっ、ありがと...」

口では笑っているけれどAの元気が明らかになかった。何があったのか話してくれるまで俺は明るくいつも通り振る舞おう。

タオルを渡すとAは荷物を置いて、俺が引いた椅子に座った。

「……先輩、」

「うん」

「選抜リレー出ててね、めっちゃかっこよかったの」

「おお、動画撮った？」

「あ、撮ったよ！」

Aはスマホを取り出して動画を見せてくれる。

歓声が響く中猛スピードでトラックを駆け抜けていくテクノカット。めちゃめちゃ足なげえなおい。

　

.......と思ったけれど、動画には関西弁の男の子の声ばかり入っている。
Aが撮ったやつじゃないんだなと直感的に思い、こりゃあダメそうだと察してAを見た。