桜色デイズ【桃】 (ページ22)

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迷いなく目黒先輩はその人の手を掴んで走り出す。

「おー！めめやるやん！」

「...彼女さんなんですか？」

横で口笛を吹く向井先輩に、冷静を装って聞いてみると予想外の答えが返ってきた。

「ちゃうちゃう。めめ、あのマネージャーさんのこと狙ってるんよ」

.......狙ってる？

「片想い、なんですか？」

狙ってる、ってことは、目黒先輩があの人を好きってことで。

「んー、どうなんやろな。意外と素直じゃないとこあるからなぁ...まあ、マネさん落としたくてサッカー部も入ったらしいし」

サッカーもうやらんて言うてたけどなぁ、ちょっと変わったんよな最近のめめは、と向井先輩が続ける。

グラウンドは大歓声に包まれていて、気付けば目黒先輩とそのマネージャーさんはゴールしていた。

すぐに選手全員がゴールして、司会の生徒が「それでは、ただいまのレースのお題を発表します」とマイクでアナウンスしはじめる。

「一位、2年3組目黒蓮さん。お題は『最近気になってる子』でした！」

周りにいる人たちがやばい！！キュンキュンする！！と騒ぎ出す。

向井先輩の話からこれは、さすがに堪えられそうになかった。

「...ごめんなさい、お手洗い行ってきます」

きっと目黒先輩は向井先輩のところに戻って来るだろうからあそこでそのまま待っていれば話せたと思うけれど、今の私にそんな余裕があるはずもなかった。

トイレの鏡に映る自分の顔は、今にも泣きそうなくらい歪んでいて情けなかった。