桜色デイズ【桃】 (ページ21)

今日:10 hit、昨日:48 hit、合計:8,033 hit

21 ページ21

クラスメイトの声に反応して少しふざけたり手を振ったりしている人がいるなか、目黒先輩は列の一番後ろで真剣な表情をしている。

(わ、かっこいい...)

その雰囲気に不意にキュンとしてしまって、慌てて緩んだ口元を引き締めた。

2年生の借り物競争は1年生よりもおもしろ系のお題が多くて、「○○の靴を履いている人」のような細かいお題から「クラスで一番ご飯を食べるのが早い人」なんていう確認のしようがないものまで。

ただそんなお題のおかげで2年生の借り物競争は大盛り上がり。あっという間に一番最後のレースが来てしまった。

アナウンスの生徒が出場選手の名前を読み上げて、スタートラインに立っている先生がピストルを構える。

「位置について...よーい、どん！！！」

当たり前だけど最後のレースは速い人たちが揃っているはずだし、先輩が勝てますように...！と心の中で祈ったのもつかの間。

「先輩、早っ.......」

「そりゃめめやしなあ。...お、何引いたんやろ」

あっという間に他の選手と大きく差をつけて１位でお題のカードのコーナーまで来た先輩は、テーブルの上にある封筒をひとつ取って開く。

なんて書いてあったんだろう。

ドキドキしながら見ていると、カードを確認した先輩がフリーズした。

「お？めめ？」

「そんなに難しいお題だったんですかね.......」

他の選手たちも追いついてカードを確認してからすぐに借り物を探しはじめる。

目黒先輩どうしたの？！と不安になった瞬間。

不意に、目黒先輩が3年生のエリアへと走り出した。

3年生の席から歓声が沸くけれど、それを無視して少し奥の方に向かって必死に手招きしている。

誰か呼んでるのかな。

そして直後に3年生の席から遠慮がちに出てきたのは、この前見かけたサッカー部のマネージャーの人だった。