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目黒先輩が、明らかに自分のものじゃない薄ピンクのスマホを高々と掲げて何かを読んでいる。
隣にいる女の子はぴょんぴょん跳ねながらスマホを取り返そうと手を伸ばしているけれど、目黒先輩は背が高いから全然届いていなかった。
学校に戻ろうと思ったけれど、足は前へと動いていく。
こんなの見たって、何にもならないのに。
ふたりはしばらく歩きながらじゃれあっていたものの、無事にスマホが彼女の手元に返ってきたらしく「パスワード変えるから、もう」「どうせ誕生日とかでしょ」と会話をしている。
そこまで見たところで、その人のポニーテールを束ねているシュシュが目に入った。
『すみません、ありがとうございます...!』
……サッカー部の、マネージャーさんだ。
目黒先輩って、サッカー部じゃなかったっけ。
ふたりから聞いた「一緒に帰る約束してて」という言葉が蘇る。
そこから目黒先輩の「いや、ちょっとだけ部室覗きに」という言葉までもしかしたら、と思ってしまう自分がいて。
(..........なに疑ってんの、私)
疑うもなにも、そんな立場じゃないのに。
結局その日は、先輩たちがいつもの角で曲がるまで後ろをとぼとぼついていくことしかできなかった。
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作者名:灯莉 | 作成日時:2023年7月22日 2時