桜色デイズ【桃】 (ページ15)

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そして、じょうろを洗おうと今度こそ蛇口をひねり、水を貯めていたとき。

「あれ、Aさん？」

間違いない、この声は。

ちょっとだけ悪戯心が湧いて、水を流して聞こえないふりをする。

「ねーえ」

耳の近くで優しい声がして、顔に熱が集まり反射的に振り返った。

「っ？！」

「ははっ、気づいた。何してんの？水やり？」

「はい。少し前に終わったところです。先輩は何してたんですか？」

「いや、ちょっとだけ部室覗きに。Aさんいたから何となく声かけちゃった、何も無いんだけど」

何もないのに声をかけてくれたことに、ちょっと、いやかなり心がときめく。何もないけど話したくなったってこと、って思っていいのかな。

そこでふと、何もないならせっかくだしと思って口を開く。

「あの、今日一緒に帰ったりとか、って」

そう思い勇気を出して言ってみると先輩は「あ～～～今日はね、ごめん！約束してる人がいて」と申し訳なさそうに返してきた。