Call*3 ページ5
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一緒に帰るようになって早くも1ヶ月が過ぎた。
｢私今から少し職員室に行かなきゃなんだけど､もしあれだったら目黒くん先に帰ってて？｣
｢いいよ､待ってる｡｣
｢いいの？ありがとう､すぐ戻るね！｣
あんなに早く帰りたがっていた俺が､放課後に教室で誰かを待つなんて。
今はこうして村瀬さんを待っている時間が心地良い。
早く家に帰るよりも､もっと一緒にいたいと思ってしまう。
駅まで続く道のりが､電車に乗っている時間が､このまま続けばいいのにと思ってしまう。
村瀬さんといると､今まで知らなかった新しい自分が顔を出すような気がする。
この気持ちに名前をつけるとしたら何だろう。
その答えを知るには､俺はまだ村瀬さんのことを知らなすぎるのかもしれない｡
｢お前さ､今度こそ告れよ？｣
｢分かってるって｡｣
｢村瀬のこと狙ってるやつ多いからな〜｣
｢それも分かってるって！｣
｢村瀬って今彼氏いんのかな｡｣
｢さぁ…黒咲が言うにはいないらしいけどな｡｣
｢あんまり男子と話してるところ見ないしな｡もしかしたらお前ワンチャンあるんじゃね？｣
｢やめろよ､期待させんなって｡｣
席に座って待っていると､近くで話す同じクラスの男子たちの会話が聞こえてくる。
その会話の中に村瀬さんの名前が聞こえてきて､駄目だとは思いつつも思わず聞き耳を立ててしまった。
村瀬さんがクラスで人気があることなんて最初から知っていた。
自分とは違う世界の人だって最初から分かっていた。
そう分かっていたはずなのに。
どうして今､胸の奥がキュッと掴まれたような痛みを感じたんだろう。
もし告白が成功して村瀬さんがあの人と付き合ったら､もう2人で帰ることはなくなるのかな。
彼氏ができたら俺なんて見捨てられるのかな。
楽しそうに話して教室を出ていった男子2人の背中を見ながらそんなことを考えて､1人で勝手に傷付いていた。
・
・
・
｢…っめ､目黒くん､ごめん､おまたせ…｣
それから10分ぐらい経った頃､村瀬さんが戻ってきた。
｢………｡｣
肩を上下させて息を切らしながらこちらへと向かってくる姿を見て､ふと気付いてしまった。
｢待ってないよ､全然｡｣
俺は村瀬さんと“友達”よりも深い関係になりたい。
村瀬さんの特別な人になりたい。
そう自分が望んでいることに。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年2月8日 20時
