３週間【青】 (ページ45)

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コンビニに入る前に、今日も渡辺くんがレジに立つ姿が確認できた。

呼吸を整えお店に入ると、渡辺くんが一瞬だけ目線を私に送り、無言のまま再び前を向く。

今日は買い物をせずに、真っ直ぐ彼の元に向かった。

「渡辺くん…さっきはごめんね」

渡「…」

「信じてもらえないかもしれないけど、聞いて欲しいの」

渡「…」

「賭けって言葉で傷付けてごめん。本当に申し訳ありませんでした」

私は深々と頭を下げた。

「だけど…渡辺くんを、生徒のみんなを思って授業に取り組んでる気持ちに嘘はないの。遊び感覚なんて全く思ってない。」

渡「…」

「私ね、渡辺くんが最初寝てた時は授業つまらないのかな、とかちゃんと聞いて欲しいなって思ってて。
それで、渡辺くんにも授業に楽しく参加してほしいって目標を最初に照に話したの。…あ、岩本先生ね」

渡「…」

「で、岩本先生も先生で、渡辺くんが自分に笑顔を見せてくれたり話してくれたらいいなって目標があって、それで…「どーでもいいわ」」

話の途中で渡辺くんが言葉を遮る。

渡「あんたらのちっぽけな目標達成なんでどーでもいいっつーの。だいたいなんで俺だけなんだよ。悪意しか感じねーし」

「違…」

渡「違わなくない？どうせ1番出来の悪そうな奴見つけて、３週間で更生させたいとか思ったんだろ？くだらねー。実習生のくせに一丁前にベテラン教師気取りかよ」

渡辺くんの言葉がズシズシと重くのしかかる。

渡「どうせここで会ったのも、岩本よりポイント稼げてラッキーくらいの気持ちでいたんだろ？それで2人で俺のこと笑い者にしてたんだろ？」

「してない！」

思ってたより大きな声が出て、自分でもビックリした。

渡「…」

「渡辺くんを笑い者にしたことも、出来が悪いと思ったことも一度だってないよ」

言いながら涙が出そうになる。

「私は、目に見えて渡辺くんが授業に参加してくれることが純粋に嬉しかった。
目を合わせて、話を聞いてくれてるって実感できて嬉しかった。友だちと笑い合うあなたの姿を見て、大変な毎日の中でも楽しいって思える瞬間があって本当に良かったって…」

渡「…！」

ついに涙が溢れてしまった。

こんな涙はズルいって分かっていても止められなくて。

手で涙を拭いながら、

「だから私のせいでそんなに自分を卑下しないで。渡辺くんは自分が思ってる以上に立派な人だよ」

最後に「今日は本当にごめんなさい」と頭を下げて店を後にした。