３週間【青】 (ページ42)

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今日も全てを終えて無事に一日が終了した。

渡辺くんのことを全く意識しない。

…というのは急には難しかったけれど、先程のA組の授業の後、改めて冷静に考え、気持ちに蓋をしたのはさっそく効果的だったみたい。

帰りのホームルームでは視線を感じてもドギマギせずに他の生徒たちと同様に、自然に渡辺くんにも視線を返しながら話をすることができた。

それに照の授業を見たのもだいぶ影響が大きかったのかもしれない。

本来のキラキラとした高校生らしい渡辺くんの姿を見て、やっぱり彼には学生生活を思いきり満喫して欲しいと思ったから。

だいたい‘’先生が来てから毎日楽しい‘’なんて言われてすぐ意識しちゃうなんて自分の青さも大概だ。

そのセリフって男女問わずどの生徒に言われても嬉しい言葉だってよく考えればすぐに分かるのに。

それに…彼には好きな人がいる。

そこを忘れてはいけない。

だから実習生である私の授業も、その青春のほんの一部として淡い記憶に残ってくれればそれでいい。

なんだか一つひとつ整理して考えたとたんに気持ちが楽になった。

ほとんどの生徒が下校し、教室がシンと静まり帰る。

私は今日の日誌のコメントの記入やら、自分のメモの整理などをしてしばらく教室に残っていた。

すると、コンコンとノックする音。

見れば照が扉の小窓から顔を覗かせて笑ってる。

照「お疲れー」

「お疲れ様！どうしたの？」

照「いや、今日はもう帰れそうだから一緒にどうかなって」

「本当？帰ろ帰ろ！ちょっと待ってね、これだけ仕上げちゃう」

照「全然。ゆっくりでいいよ」

そう言いながら照は教室に入り、目の前の渡辺くんの席に座った。

教卓に立つ私と、渡辺くんの席に座る照。

…なんか変な感じ。

照は突然机に顔を伏せて寝る真似を始めた。

照は真面目なので、授業中にこんな風に寝てる姿を今まで見たことがない。

「何してんの？」

照「いや…Aから見る渡辺ってこうゆうことっしょ？」

「…最初はね。でも今はちゃんと起きて授業聞いてくれてるよ」

すると照が顔を上げる。

照「俺にも最近笑顔で話すようになったよ、あいつ」

知ってる。今日授業を見てたから。

「良かったね」

照「賭けはドローだったな」

「だからそういう言い方は…」

そこまで言いかけた時、ガタッと教室の後ろの扉が開いて心臓が止まりそうになった。

見たことないくらい、怖い顔をした渡辺くんがそこにいたから。