３週間【青】 (ページ5)

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1限から3限で他のクラスの授業の様子を見学した。

山田先生の授業は分かりやすく丁寧で、生徒達との距離感も程良く、人気があるのが一目瞭然だった。

後ろで見学してる間も、時折投げかけられる生徒たちの視線がなんだか気まずい。

授業が終わり、教室を出ていこうとすると、

「先生ー！」と女子生徒たちに囲まれた。

『（人1）先生ってこの学校にすでに1人いるからさ、A先生って呼ぶね！』

「あ、うん」

まぁこれくらいの距離感は大丈夫なはず。

『ねぇ、先生めっちゃ可愛い！そのチークどこの？』

『先生って彼氏いるの？』

『A先生って岩本先生と同じ大学？』

などなど…

それはもう質問攻めで。

自分は高校生の時は、こうやって進んで実習生に絡みに行くタイプではなかったけれど、確かにこうやって話しかけてる子たちいたなぁって思うと懐かしい。

質問に対しては全て軽やかに話を逸らし、授業の質問もお待ちしてます、とその場を離れた。

男子生徒たちは女子のように距離は詰めてこないものの、廊下を歩いていると「Aちゃーん！」と呼びながら手を振ったり、「先生可愛いー！」とまるで友だちのように接してくる。

なんかさっそく私舐められてる…？

授業を開始する前からそんな不安に駆られた。

そしてついに4限目。

初めてA組での授業を行う時が来た。

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阿部くんの号令で授業が始まる。

「よろしくお願いします。…じゃあまず、教科書の36ページを開いて下さい」

何度も何度も繰り返しシュミレーションをしてきた。

落ち着いてゆっくり。

授業の途中で、こちらから問題を出す時間も設けた。

最初は挙手制にすると、すかさず阿部くんと井沢さんが手を挙げる。

事前資料ではこの2人の成績は学年でもトップクラス。

答えもお見事だった。

途中からは名指しで問いかけることもしてみる。

生徒たちが緊張しないように、決して授業が嫌にならないように努めながら。

すると、当てられた生徒たちも「マジかー！」とか言いながらも一生懸命考えて答えてくれた。

例え回答が違っても、答えてくれたことをまずは讃え、例を通してできるだけ丁寧に解説していった。

順調に授業は進み、チャイムが鳴る前に予定していた分の内容をきちんと終わらせることができたので、とりあえずはホッとした。

しかしこの間も、目の前の渡辺くんが顔を上げることは一度もなかった。