３週間【青】 (ページ4)

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「初めまして。（人1）Aと言います。今日からこの学校で３週間、古典の授業を受け持つことになりました。

また、A組のホームルームも担当するので、皆さんとは特に1番関わりが多くなると思います。

短い間ですが、少しでも皆さんに分かりやすく楽しい授業が行えるよう頑張ります。

どうぞ、よろしくお願いします」

頭を下げると、パチパチと盛大な拍手をしてもらえて嬉しかった。

山「くれぐれも授業以外の質問や交流は控えるように。分かったなー？」

「はーい」

そんな流れの後で、早速朝のホームルームで出席を取ることになった。

座席と名前と顔を一致させながら1人ずつ名前を呼んでいく。

「阿部亮平くん」

阿「はい！」

彼はこのクラスの学級委員。先程の号令を掛けたのも阿部くん。

教壇から見て1番前の左の席に座っている。

「井沢由香さん」

「はい！」

彼女もまた、このクラスの学級委員。

私の目の前、つまり教壇前の左側に座っている。

そして次々順番に名前を呼び、後半へと差し掛かる。

「宮舘涼太くん」

「はい」

彼は真ん中の列の1番後ろ。

そして名前順の最後の名前を呼ぶ。

「渡辺翔太くん」

「…」

そう、彼。

私の目の前で堂々と机に伏して寝ている。

教室に入って来た時からずーーーっと。

山田先生も慣れっこなのか、注意もせずに見過ごしていた。

それでいいんですか…？

周りの生徒たちも、渡辺くんが寝ているのは日常みたいで誰も気に留めていない。

「えっと…渡辺翔太くん」

もう一度名前を呼ぶがビクともしない。

しだいにクラスに笑い声が溢れ、「おいしょーたー！」「起きろー！」「なべー！」など彼を起こすコールが始まる。

それでもなお机に伏したままの彼に、ついに隣の席の井沢さんが声を掛ける。

由「翔ちゃん！…ねぇ、翔ちゃん起きて！」

呼び方からして親しさを感じる彼女の呼びかけに、ようやく「うーん…」と唸り声を上げながら渡辺くんが動き出す。

それでも顔を上げようとしない彼に、井沢さんが肩を叩くと、ようやくモソモソと上体を起こした。

そこで初めて目が合う。

明らかに誰？って顔をしてるけど、自己紹介はもう済んでいるのでここは省略で。

「渡辺、翔太くん」

翔「…うぁい」

あくび混じりの返事に再び教室にどっと笑い声が響いた。