３週間【青】 (ページ11)

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こんな時、無理矢理答えさせるのは逆効果だと感じていた。

せっかくの古典文学を嫌いになられてしまったらそれこそ意味がないから。

「じゃあ、40ページの一行目から六行目までを読んでもらえるかな」

音読のお願いに切り替えてみた。

それすらもやや億劫そうだったけど、きちんと教科書を立ててゆっくりと文を読み始める。

所々漢字でつまずいてしまう所も井沢さんの横からのスケットが入り、見事にクリアして読み切ってくれた。

渡辺くんの声は低すぎず高すぎない奏でるような声で、聞いていてとても心地良かった。

これもまた発見の一つだった。

「どうもありがとう。渡辺くんの音読、とても聞きやすかったです」

素直に感想を告げると、拍子抜けしたような顔を一瞬見せてから、下を向いてしまった。

周りも「良かったなー！」「翔太が授業受けてる！笑」と口々にからかっていた。

それから約20分程で授業は終了したが、驚くことに音読してから最後まで渡辺くんが机に伏す事はなかった。

初めて全員が顔を上げて聞いてくれた授業は、涙が出そうなくらい嬉しかった。

そのまま忘れないうちにと、この実習期間中に生徒についての特徴を自分なりにまとめた“生徒ノート“なるものに、今日の宮舘くんと渡辺くんの情報を書き加えた。

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嬉しい気分のまま職員室に戻り、実習ノートを取りに行く。

すると、今日初めて顔を合わす照とバッタリ会った。

照「おー！お疲れ！今日初だな！」

「びっくりする程会わなかったね！」

同じ敷地内にいるというのに、科目が違うと全く会わないものなのだと驚いた。

照「あれ？なんか…今日は嬉しそうじゃん」

さすがは長年一緒にいるだけあって感情の違いにすぐ気付く照。

それとも私が分かりやすいだけかな…？

「うん、まぁね！」

照「もしかして早くも渡辺が起きてたとか？」

…お見事。

照「何？当たり？！笑マジか、良かったじゃん！笑」

「まぁ、今日たまたまかもしれないけどね」

照「2日目にしてAの執念勝ちだな！笑」

「執念って…そんな圧はかけてないけど」

話しながら職員室を出たところでケラケラ笑いながら照に頭をくしゃくしゃにされた。

「もー、ぐしゃぐしゃにしないでよ」

そんなやり取りをしていたら、私たちが受け持つ生徒たちに見られて「先生たち付き合ってるのー！？」「イチャイチャしてる！」など散々揶揄われて大変だった。